【難病とは】
難病とは医学的に明確に定義された病気の名称ではありません。いわゆる「不治の病」に対して社会通念として用いられてきた言葉です。
昭和47年の厚労省(当時)の難病対策要綱では、難病は、1)原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病、2)経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず、介護等に等しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病、と定義されました。
この難病対策要綱では、難病に対する対策の進め方として、1)調査研究の推進、2)医療施設の整備、3)医療費の自己負担の解消、の3つが挙げられました。これにより、難病の病因・病態の解明研究及び診療整備のみならず、難病に対する医療費の公費負担が初めて目指されました。当初の調査研究の対象としては、スモン、ベーチェット病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、再生不良性貧血、多発性硬化症、難治性肝炎が選ばれ、特に前述の4つの病気が医療費助成の対象としてスタートしました。
その後、難病研究は進展をし、研究対象とする病気の数は徐々に増加、数百の病気について疾患概念の確立や治療法の開発などの研究が進められることとなりました(難治性疾患克服研究事業)。また、医療費助成の対象疾患としては、「診断基準が一応確立し、かつ難治度、重症度が高く、患者数が比較的少ないため、公費負担の方法をとらないと原因の究明、治療法の開発などに困難をきたすおそれのある疾患」として、56疾患が特定疾患治療研究事業(医療費助成事業)の対象となりました。
当時は、この56疾患が「特定疾患」と言われていましたが、平成27年1月1日に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が施行され、難病法での医療費助成疾患は「指定難病」という名称となりました。これにより、特定疾患のうち、スモン等の一部の疾患以外は、特定疾患治療研究事業から難病法に移行となりました。
【指定難病】
平成27年1月1日に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が施行され、医療費助成の対象となった疾患は「指定難病」と呼ばれるようになりました。潰瘍性大腸炎やクローン病も「指定難病」です。
この法律では、難病は、1)発病の機構が明らかでなく、2)治療方法が確立していない、3)希少な疾患であって、4)長期の療養を必要とするもの、という4つの条件が示され、「指定難病」にはさらに、5)患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと、6)客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立していること(さらに重症度分類で一定程度以上であること)、という2条件が加わっています。
令和元年7月1日施行の「指定難病」は、333疾患となっています。
(参考・引用:難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/4141
【小児慢性特定疾患】
児童福祉法による医療費助成制度で、小児がんなど治療の期間が長く、医療費負担が高額となる疾患が対象で、クローン病、潰瘍性大腸炎も含まれています。児童福祉法の制度なので対象は18歳未満となりますが、18歳になる前に小児慢性特定疾患として医療費助成を受けている場合、18歳到達後も引き続き治療の必要があると認められる場合には20歳到達前(20歳未満)まで対象となります。
(参考・引用:小児慢性特定疾患情報センター https://www.shouman.jp/assist/outline